エボラ出血熱はエボラウイルスによる急性熱性疾患です。この病気は必ず出血を伴うわけではないことから、最近はエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼ばれることが多くなりました。EVDは、感染したヒトまたは動物の血液や体液に直接接触した場合に感染します。エボラウィルスは、オオコウモリの複数種が自然宿主ではないかと考えられています。空気感染はなく、ヒトへの感染の発端は、アフリカの熱帯雨林の中で死亡した野生動物(オオコウモリ、チンパンジー、ゴリラ、サル、レイヨウ、ヤマアラシなど)に触れたことによると言われています。感染したヒトの血液や分泌物、臓器、その他の体液に直接接触したり、汚染された環境で間接的に接触することでヒトへの感染が起こるとされています。アフリカの葬式の風習で、会葬者が遺体に直接触ることも、EVD伝播を増長したと考えられています。
今年の夏、西アフリカ諸国で起こっているEVDの流行は、2014年3月にギニアでの集団発生から始まり、国境を越えて隣国のリベリア、シエラレオネへと流行地が拡大し、さらにアラビア半島でも患者が発生したと伝えられました。EVD患者の発生はその後も続いており、これまでで最大の流行となっています。そしてついにスペインやアメリカでもアフリカからの帰国者に発生し、それを治療した医療関係者にも二次感染が広がりました。
EVDはなんといっても高い死亡率が特徴です。2014年8月11日現在、患者(疑いを含む)の累計は1975例、うち死亡例1069例、致命率は54%です。国別では、ギニア510例(死亡377例)、リベリア670例(死亡355例)、シエラレオネ783例(死亡334例)、ナイジェリア12例(死亡3例)です。注目すべきは、医療従事者も51人死亡していることです。現在では患者数はさらに多くなっています。
エボラウイルスは、短径が80~100nm、長径が700~1,500nmで、U字状、ひも状、ぜんまい状等多形性を示しますが、組織内では棒状を示し、700nm前後のサイズがもっとも感染性が高くなります。
症状は、初め突然の発熱、強い脱力感、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどで、その後、嘔吐、下痢、発疹、肝機能および腎機能の異常、さらに出血傾向が加わります。潜伏期間は2日から最長3週間といわれています。2000年のウガンダでの流行では、上記症状に加えて、衰弱のほか下痢等の消化器症状が目立ち、出血症状が認められたのは10%以下でした。肝臓が腫れて、右上腹部の痛みがありますが、症状として特徴的なものはないと言われています。抗体が検出されるようになると急速に回復に向かいます。
診断は、血液、咽頭拭い液、尿によるウイルス学的検査でウイルスを分離するのがもっとも確実です(国立感染症研究所ウイルス第一部第一室(村山庁舎)が検査を担当)。
エボラウイルスに感染しないためには、流行地域に行かないことです。やむを得ず流行地に行く場合は、この地域で野生動物に触ったり、その肉を生で食べたりしないよう注意が必要です。さらに患者の体液や排泄物、患者が触れた可能性のある物品に素手で触れない、もし触れた場合は十分な手洗いを行うことが重要です。
現時点でワクチンや治療薬はなく、治療は対症療法のみです。日本で開発された研究段階の薬剤などについて、感染者への投与が検討されています。
(国立感染症研究所ウイルス第一部/感染症疫学センターのホームページを参照、一部改変)