
- ・マラリア
・デング熱
・エボラ出血熱(エボラウィルス病)
・西ナイル熱
・ラッサ熱
・マールブルグ熱
・クリミア・コンゴ出血熱
このうちマラリアの病原体は原虫ですが、他の6つはウイルスによるものです。今まで熱帯地方にしか見られなかったこうした病気が、わが国やヨーロッパ、アメリカでも発生するようになったのは、熱帯や亜熱帯の地域とこれらのとの間で人の往来が頻繁になったこと、地球温暖化でウイルスを媒介する熱帯性の蚊などが、日本でも生息するようになったことなどが考えられます。
左のQRコードを読み込んでいただくと、携帯サイトがご覧いただけます。
このうちマラリアの病原体は原虫ですが、他の6つはウイルスによるものです。今まで熱帯地方にしか見られなかったこうした病気が、わが国やヨーロッパ、アメリカでも発生するようになったのは、熱帯や亜熱帯の地域とこれらのとの間で人の往来が頻繁になったこと、地球温暖化でウイルスを媒介する熱帯性の蚊などが、日本でも生息するようになったことなどが考えられます。
エボラ出血熱はエボラウイルスによる急性熱性疾患です。この病気は必ず出血を伴うわけではないことから、最近はエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼ばれることが多くなりました。EVDは、感染したヒトまたは動物の血液や体液に直接接触した場合に感染します。エボラウィルスは、オオコウモリの複数種が自然宿主ではないかと考えられています。空気感染はなく、ヒトへの感染の発端は、アフリカの熱帯雨林の中で死亡した野生動物(オオコウモリ、チンパンジー、ゴリラ、サル、レイヨウ、ヤマアラシなど)に触れたことによると言われています。感染したヒトの血液や分泌物、臓器、その他の体液に直接接触したり、汚染された環境で間接的に接触することでヒトへの感染が起こるとされています。アフリカの葬式の風習で、会葬者が遺体に直接触ることも、EVD伝播を増長したと考えられています。
今年の夏、西アフリカ諸国で起こっているEVDの流行は、2014年3月にギニアでの集団発生から始まり、国境を越えて隣国のリベリア、シエラレオネへと流行地が拡大し、さらにアラビア半島でも患者が発生したと伝えられました。EVD患者の発生はその後も続いており、これまでで最大の流行となっています。そしてついにスペインやアメリカでもアフリカからの帰国者に発生し、それを治療した医療関係者にも二次感染が広がりました。
EVDはなんといっても高い死亡率が特徴です。2014年8月11日現在、患者(疑いを含む)の累計は1975例、うち死亡例1069例、致命率は54%です。国別では、ギニア510例(死亡377例)、リベリア670例(死亡355例)、シエラレオネ783例(死亡334例)、ナイジェリア12例(死亡3例)です。注目すべきは、医療従事者も51人死亡していることです。現在では患者数はさらに多くなっています。
エボラウイルスは、短径が80~100nm、長径が700~1,500nmで、U字状、ひも状、ぜんまい状等多形性を示しますが、組織内では棒状を示し、700nm前後のサイズがもっとも感染性が高くなります。
症状は、初め突然の発熱、強い脱力感、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどで、その後、嘔吐、下痢、発疹、肝機能および腎機能の異常、さらに出血傾向が加わります。潜伏期間は2日から最長3週間といわれています。2000年のウガンダでの流行では、上記症状に加えて、衰弱のほか下痢等の消化器症状が目立ち、出血症状が認められたのは10%以下でした。肝臓が腫れて、右上腹部の痛みがありますが、症状として特徴的なものはないと言われています。抗体が検出されるようになると急速に回復に向かいます。
診断は、血液、咽頭拭い液、尿によるウイルス学的検査でウイルスを分離するのがもっとも確実です(国立感染症研究所ウイルス第一部第一室(村山庁舎)が検査を担当)。
エボラウイルスに感染しないためには、流行地域に行かないことです。やむを得ず流行地に行く場合は、この地域で野生動物に触ったり、その肉を生で食べたりしないよう注意が必要です。さらに患者の体液や排泄物、患者が触れた可能性のある物品に素手で触れない、もし触れた場合は十分な手洗いを行うことが重要です。
現時点でワクチンや治療薬はなく、治療は対症療法のみです。日本で開発された研究段階の薬剤などについて、感染者への投与が検討されています。
(国立感染症研究所ウイルス第一部/感染症疫学センターのホームページを参照、一部改変)
デング熱は、デングウィルスを持ったネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されると感染します。これらの蚊は、特に東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国に多く生息していますが、アフリカ、オーストラリア、中国、台湾でも見られます。デング熱は世界中で毎年1億人が感染し、そのうち約25万人が重症なデング出血熱を発生すると推定されています。デングウイルスの感染経路はヒト→蚊→ヒトで、中間宿主(豚など)がいないため、わが国で発生しても大流行にはなり難いといわれています。
症状は、感染して3~7日後、急な発熱と頭痛、眼窩痛・筋肉痛・関節痛が発症し、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともあります。 発病して3~4日後に胸部・体幹に発疹が出て、四肢・顔面へ広がります。こうした症状は1週間程度で消えて、普通は、後遺症なく回復します。しかし一部の患者は、発熱が終わりかけたころに、血漿漏出と出血傾向を示すデング出血熱になることがあります。この場合患者は、不安・興奮状態となり、発汗がみられ、四肢は冷たくなります。胸水や腹水が高率にみられ、肝臓が腫れて、多くは皮下に細かい点状出血がみられます。10~20%の人では鼻出血や消化管出血などがあります。血漿の漏出が進行すると、循環血液量の不足からショックになります。デング出血熱は、適切な治療が行われないと死ぬこともあるので、十分な注意が必要です。
デング熱のワクチンはなく、治療は輸液や鎮痛解熱剤の投与です。鎮痛解熱剤としてアスピリンは禁忌で、アセトアミノフェンが使われます。輸液は、電解質液や血漿製剤が使用されます。ショックになったときは、酸素投与や重炭酸ナトリウムの投与も行なわれ、血小板が減少した場合は、血小板の輸血が行われます。予防は、長袖服・長ズボンを着用し、虫除けスプレーを使用するなどして、蚊に刺されないようにすることです。
(国立感染症研究所ウイルス第一部 高崎智彦氏の記事から抜粋、一部改変、
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k04/k04_50/k04_50.html )
マラリアの病原体は、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアの4種類の原虫です。マラリアは媒介動物であるハマダラカに刺されると感染します。亜熱帯・熱帯地域の住民にとって重要度の高い疾患ですが、旅行者にとっても危険な疾患です。マラリアのなかでも熱帯熱マラリアは迅速、適切な治療を受けないと、短期間で重症化あるいは死亡する危険性があります。
マラリアは世界で100カ国以上にみられ、年間3~5億人が罹かり、150~270万人が死亡するといわれています。その大部分はアフリカ南西部の5歳未満の小児です。他に東南アジアやソロモンなどの南太平洋諸島、中南米などでも多く発生しています。日本国内での報告数は、1990年代は年間50~80人でしたのが、1999年(4~12月)は112例、2000年1~12月には154例と一時増加しました。しかしその後、2001年は109例、2002年は83例、2003年は78例と減少しています。
症状は悪寒を伴う発熱ですが、倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などがみられることが多く、ときには悪心・嘔吐、下痢、腹痛などの腹部症状や、乾性咳嗽などの呼吸器症状がみられることもあります。戦慄(振るえ)は特に熱帯熱マラリアではみられないこともあります。貧血は初期にはないが、長期化するとみられます。
熱帯熱マラリアの重症例では、脳症、腎症、肺水腫/ARDS(成人呼吸速迫症候群)、出血傾向、重症貧血、代謝性アシドーシス、低血糖、黒水熱(高度の血色素尿症)など種々の合併症を生じることがあります。
治療法は、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアの急性期は、クロロキンが使われますが、一部にクロロキンが効かないこともあります。三日熱マラリアと卵形マラリアの場合、急性期治療が終了した後、プリマキンで肝臓に潜む原虫を殺す治療が行われます。熱帯熱マラリアではクロロキン耐性があり、その外の薬剤を用いなければなりません。重症マラリアではキニーネ注射薬が使われますが、最近ではアーテミシニン等の注射や坐剤が用いられることがあります。重症マラリアではそれ以外に、合併症治療も大切です。欧米では最近、交換輸血が積極的に行われる傾向があります。
予防の3原則は、1)蚊による刺咬を避ける、2)予防的に抗マラリア薬を服用する、3)マラリアの感染が疑われるときは、自己判断で抗マラリア薬を服用すること、です。この場合、3)は、あらかじめ専門的な知識を持った医師と相談しておくべきものと思われます。