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文京区,本郷,内科,循環器内科,小児科,高血圧,心臓病,生活習慣病【タツノ内科・循環器科】

医療講座

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医療講座

タツノ内科・循環器科は、榊原記念病院、榊原記念クリニック、榊原サピアタワークリニックなどと連携しています。心臓、血圧、血管の病気についてはこれらの医療機関と協力して診断、治療に当たっています。
一口に心臓血管病といってもいろいろな種類があります。高血圧などの全身病、狭心症、心筋梗塞、心筋症などの心筋の病気、心臓弁膜症、心臓のリズムが異常になる不整脈、大動脈が瘤状に膨れたり、足の血管が詰る閉塞性動脈硬化症などの血管病、それに生まれつきの病気である先天性心疾患などです。そしてそれらを引き起こす原因も、糖分や脂肪、塩分の摂り過ぎなどによる糖尿病や高脂血症、動脈硬化、それに喫煙や感染症、遺伝などといったさまざまなものがあります。
これからそれらの心臓・血管病の成り立ちや診療の内容について、順次お話していきます。

医療講座2に続きます

医療講座2に続きます

2010年10月25日月曜日

医療講座1=心臓血管病=は、大動脈瘤まで続きます。

医療講座2=感染症=は、2011年5月23日、月曜日で一旦中止しています。

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大動脈瘤 その2

2010年8月16日月曜日

大血管の病気

大動脈瘤 その2

Oさんは68歳の男性の税理士さん。がっちりした体型で、暑がりのため冬でも薄着で、精力的に仕事をしていました。タバコは吸わず、食事も野菜や魚を多くするなど注意を払っていました。ただし塩分の濃いものが好きで、顧客と打ち合わせのあとよく酒宴に招かれ、夜遅い帰宅も稀ではありませんでした。自営業のため健診は受けたことがなく、血圧はたまに風邪などで近医受診時に、下の血圧が高いといわれていました。

奥さんが出かけて一人暮らしをしていたある冬の朝、自宅で急に胸と背中が痛くなり、意識がぼんやりして倒れてしまいました。そのときたまたま近所の人が尋ねてきて、部屋で倒れているOさんを発見し、救急車で病院に搬送してくれました。

病院では胸部レントゲン写真、CT、MRI検査を行い、上行大動脈から弓部にいたる大動脈解離と診断され、緊急手術を受けました。人工血管による置換手術は、吻合部の出血がなかなか収まらず、手術時間が13時間に及びました。

術後も熱が下がらず、長く抗生物質の点滴を受け、長期の入院になりましたが、リハビリテーションを行って、2ヵ月後に無事退院することができました。

大動脈解離

大動脈の内膜が部分的に破れて、破れ目から中膜の中に血液が入り込み、中膜を縦に裂いて血液が流れて、また末梢の内膜の破れ目から本来の大動脈内腔に血液が出てしまう状態を大動脈解離といいます。内膜が破れるのは、上行大動脈と弓部大動脈の左鎖骨下動脈分岐部の先が多いと言われています。解離腔に入った血液が外膜を破って外側に出れば、大量出血を起こします。解離が胸部大動脈から腹部大動脈、そして左右の腸骨動脈にまで及ぶと腹部の肝臓や胃腸管、腎臓などが虚血になり、いずれの場合も命に関る状態になります。心臓に向かって解離が進むと冠動脈を圧迫したり、大動脈弁が閉鎖不全を起こしたり、大動脈が根元で破れて、心タンポナーデになったりします。

診断は造影CT検査で解離腔を見つけることでできます。

治療はほとんどが手術で、大抵の場合、待ったなしの手術になります。破れた内膜部の血管を切除して、その中枢と末梢の大動脈のはがれた内膜と中膜・外膜を縫い合わせて、人工血管で置換します。冠動脈や腹腔動脈、腎動脈などが巻き込まれていれば、それぞれ壁ごと切り取って人工血管に縫い付けます。

大動脈解離は大動脈の解離の範囲がさまざまであること、巻き込まれる動脈の枝がいろいろであること、動脈壁がもろく吻合部から出血を止めにくいことなど、緊急手術が多いことなど、手術には多くの危険が伴います。手術成績は、病気の進行度合いや巻き込まれた分枝血管の種類、年齢などで異なりますが、診断方法の向上と止血法など手術法の改良によって、年々向上しております。
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大動脈瘤 その1

2010年7月19日月曜日

大血管の病気

大動脈瘤 その1

Nさんは60歳の男性。中肉中背で、テニスを趣味としている普通のサラリーマンです。これまで毎年、会社の健康診断で、高血圧と胸部レントゲン写真で大動脈の拡大を指摘され、専門医の受診を勧められていました。しかし症状がないのでそのままにしていました。

還暦を迎えた今年、Nさんは一念発起して循環器専門医を受診しました。胸部CT検査で大動脈弓部の先の方に直径6cmの大動脈瘤がありました。破裂の危険があるので、大動脈瘤を取り除いて人工血管で置き換える手術をした方がよいと勧められました。

家族、親戚と相談した結果、Nさんは手術を受けることにしました。3週間にわたる入院で大動脈弓部の人工血管置換術を受けて、無事自宅に帰ったNさんはつくづく自らの幸運を感じました。60歳というまだ体力のあるうちに手術ができたこと、糖尿病や他の手術の危険因子がなかったこと、大掛かりな手術であったにもかかわらず特に合併症もなく経過したこと、会社がNさんに2ヶ月間の特別休暇を与えてくれたことなど。特に家族らの全面的な支援が、Nさんにとって手術を乗り越えるうえで大きな支えになりました。

手術後、リハビリテーションを続け、さらに1ヶ月間自宅療養を延長したのち、Nさんは仕事に復帰しました。半年たった現在、前と同じように通勤が可能になりました。

大動脈瘤

大動脈瘤は動脈の壁が弱くなって次第に膨れていく病気です。大動脈の壁は内膜、中膜、外膜の3層からできています。内膜は内側の血液と直接接する面にある一層の細胞層です。中膜は丈夫な伸び縮みする弾性繊維からなり、動脈壁の支えになっています。外膜はまばらな繊維性組織や間質性細胞、血管、神経末端などからなります。

大動脈瘤には二つの種類があります。一つは真性大動脈瘤といって、内膜から外膜までが全体に膨れてしまうものです。もう一つは大動脈解離といって、内膜の一部が破れて血液が中膜の層を割くように進入して、内膜側と外膜側に分離してしまうものです。真性大動脈瘤は、主に動脈硬化などで中膜の弾性線維が劣化して、伸び切ってしまうために起きます。上行大動脈から腹部大動脈まで大動脈のどこにでもできます。(2010年2月)

大動脈瘤は直径が5cmを超えると自然に破裂する可能性が高くなります。また全体が膨らんで紡錘形のものより、大動脈の脇や上下にとび出した不整形のものの方が破れやすいといわれています。

手術は胸部大動脈の場合は、大体は人工心肺を使って冠状動脈や脳動脈に灌流カニューレを挿入して、血液を流しながら動脈瘤を切除して、人工血管を縫いつけて治します。横隔膜より下の腹部大動脈では人工心肺を使わないで手術を行います。

マルファン症候群(体全体の結合組織が弱くなるなどの遺伝的全身病)に伴う上行大動脈瘤では、大動脈の心臓からの出口付近が拡大して、大動脈弁に逆流が生じることがあります。この場合は動脈瘤の切除と大動脈弁置換、それに冠状動脈の再建手術を一緒に行います。

最近では人工血管にステント(金属製の網枠)をつけて、カテーテル式に血管内に人工血管を挿入する方法も行われています。

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先天性心臓病 その5

2010年6月21日月曜日

先天性心臓病
フォンタン手術

先天性心臓病 その5

Lさんは軽度のチアノーゼのある3歳の女の子です。チアノーゼがあり、体は小さかったが、日常生活に特別困ることもなく、今まで過ごしてきました。生後、産科医から循環器小児科を紹介され、三尖弁閉鎖、肺動脈狭窄と診断されました。ご両親は、Lさんが幼稚園に入ることになり、そろそろチアノーゼが気になること、運動が活発な他の児についていけないことを心配していました。怪我や歯の治療などで脳膿瘍を起こす危険性があると聞いており、そのことも気になったので、手術を受けることにしました。

Lさんはフォンタン手術を受けました。上大静脈を直接右の肺動脈へつなぎ、下大静脈には人工血管をつないでそれを肺動脈につなぐ、心外導管バイパス手術でした。手術後、Lさんはチアノーゼがなくなり、元気に幼稚園に通うようになりました。

フォンタン手術

三尖弁閉鎖は、三尖弁が閉じているために右心室が小さく、血液が左心室から心室中隔欠損を通して肺動脈に流れて行きます。そのため肺高血圧や極端な肺動脈狭窄がなければ、乳児期は症状が軽いことがあります。しかし静脈血が全身に流れていくので、チアノーゼがあり、脳膿瘍を起こす危険性も少なくありません。

この疾患に対して1971年、フランスの外科医フランシス・フォンタンが、従来の考え方を根本的に変える、右心室を使わない右心房-肺動脈バイパス手術を考案しました。その後フォンタン手術は、下大静脈の血液を右心房の中をトンネル状に通して肺動脈に吻合するTCPCという手術に改良されました。しかし右心房を使うと術後に不整脈が起こりやすくなることが分かました。そこでさらに下大静脈に人工血管を縫いつけて右肺動脈に吻合する、心外導管バイパス術(心外導管TCPC)が導入され、現在それが主流になりました。

やがてフォンタン手術は、右心室、左心室のどちらかが発育障害のある先天性心疾患、例えば純型肺動脈閉鎖や左心低形成症候群、単心室などの治療にも応用されるようになりました。フォンタン手術では右心室を使わず静脈圧で肺動脈に血液が流れていくため、手術適応を厳密に選ぶ必要があります。肺動脈の血圧(血管抵抗)が高いとこの手術は行えません。また年齢が高くなると、肺血管へ大動脈からバイパス(側副血行路)ができますが、そうなるとやはりフォンタン手術は難しくなります。

フォンタン手術後顔色は良くなりますが、身体の活動能力自体は劇的に改善しません。運動しても心拍は十分に増えず、酸素摂取量も2心室の人に比べて低い状態に留まります。また妊娠、出産も危険を伴う可能性があると考えられています。

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先天性心臓病 その4

2010年5月17日月曜日

先天性心臓病

先天性心臓病 その4

K君は生れた直ぐ後から顔色が紫色のため、産科医から紹介されて、心臓専門病院に転送されました。入院後はときどき顔色が発作的に悪くなってぐったりするため、酸素吸入が必要になりました。

病院の検査でファロー四徴症と分かり、薬をもらって発作は治まりました。その後チアノーゼが次第に強くなってきましたので、生後1ヶ月目に右の鎖骨下動脈と肺動脈を細い人工血管でつなぐ、ブレロック手術を受けました。

これで顔色が良くなり、ミルクも飲めるようになったので、外来で様子を見ることになりました。半年後、再入院して心臓カテーテル検査を受けました。そして直ぐに心臓の内部を治す手術を受け、K君はすっかりチアノーゼが消えて、元気になりました。

ファロー四徴症

ファロー四徴症は、チアノーゼ性心疾患を代表する病気です。これは心臓に4つの異常があるという意味で四徴症と名づけられたのです。

四つの徴候のうち病気の本体をなすのは2つで、心室中隔欠損と右室流出路狭窄です。残りの右室肥大と大動脈の心室中隔への騎乗は、程度にもよりますが、病気の重さや治療方法を決定する上であまり重要な意味を持っていません。

ファロー四徴症の心室中隔欠損は大きく、ほとんどの患者さんで直径1~3cmくらいあります。右室流出路狭窄は、右心室の出口から肺動脈の末端まで、いろいろな部分が狭くなります。最も軽い場合、肺動脈は普通の大きさ近くまで発育していて、右心室の出口と肺動脈弁が狭くなっただけのことがあります。反対に最も重くなると、主肺動脈が全くなく、右心室と肺動脈がつながっておらず、左右の肺動脈も別々に動脈管あるいは大動脈から出ている形をしています。肺動脈の発達もさまざまで、もっとも重症例では肺動脈が全くなく、代わりに大動脈から気管支動脈が太くなったような動脈血管が肺に血液を送っています。

ファロー四徴症はたいていの場合、チアノーゼがありますから、乳児期に診断されます。経過や症状をよく観察し、心臓を聴診して、心電図やレントゲン写真などを調べれば、大抵診断がつきます。心エコー検査で確定診断ができます。

軽症の場合は薬でしばらく様子を見ることができますが、チアノーゼが強い場合は生まれて間もない赤ちゃんのときにブレロック・タウシッヒ短絡術という鎖骨下動脈-肺動脈の間のバイパス術、つまり一時しのぎの手術をします。ファロー四徴症では心室中隔欠損を通って静脈血が脳にいきやすいので、脳膿瘍や塞栓症になる可能性があります。また体を動かすと苦しくなり、成長するに従って肺動脈の発育も悪くなるので、早めに手術治療を行うほうが良いといえます。心臓や肺動脈の発育状態にもよりますが、肺動脈が極端に細くない限り、2,3歳までに心臓の中を修復する手術をすることをお勧めします。

右室流出路の狭窄は、右心室の筋肉を削ったり、肺動脈弁を切開して広げたり、肺動脈に膜を当てたりして拡大します。心室中隔欠損は布を縫い付けて閉じます。このとき刺激伝導系が孔の周辺を走っていますので、傷つけないように慎重に縫う必要があります。

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先天性心臓病 その3

2010年4月19日月曜日

先天性心臓病

先天性心臓病 その3

Iちゃんは生後1ヶ月目の赤ちゃんです。生後しばらくはチアノーゼもなく元気でしたが、数日前からミルクが飲めなくなり、息苦しく、呼吸するとおっぱいの下あたりが大きく凹むようになりました。かかりつけの小児科医から心雑音があって、心臓の拡大と肺のうっ血があり、心室中隔欠損といわれ、心臓病専門病院を紹介されました。

心電図と胸のレントゲン写真で、心臓の拡大と肺への血流の増加、左右の心室の肥大がありました。心エコー検査で右心室圧が高く、左右の心室と肺動脈の拡大があって、心室中隔に直径8mmの中隔欠損を認めました。

薬を飲みながらしばらく経過観察を受けていましたが、心室中隔欠損は自然に閉鎖する傾向が見られなかったので、生後3ヶ月のとき手術を受けました。体重が5kgあり人工心肺を使いましたが、幸い輸血を使わず布で欠損を閉じることができました。

手術後は肺動脈圧が正常値まで下がって、息も苦しくなくなり、元気になりました。

心室中隔欠損

心室中隔欠損は心房中隔欠損と並んで先天性心疾患の中ではもっとも頻度の高いものです。心室中隔欠損は右と左の心室の間を仕っている壁(中隔)に孔が開いている病気です。生れた直後から聴診で大きな心雑音が聞こえることが多く、どちらかというと見つけ易い病気です。

診断は聴診、心電図、胸部レントゲン写真、心エコー検査などでつけられます。心室中隔は肺動脈弁の直ぐ下から心室の先端(心尖といいます)まであるので、そのどこにでも中隔欠損ができます。肺動脈弁の直ぐ下に開いた欠損では、大動脈弁が孔を通って右心室側に出っ張って逆流を起こすことがあります。三尖弁の付け根の欠損(膜様部欠損といいます)では、自然閉鎖するものもありますが、右心室に筋肉性の狭窄を起こすこともあります。心尖近くの筋肉中隔の欠損(筋性中隔欠損といいます)は、乳児期に自然閉鎖することもあります。しかし閉鎖しない場合は、孔が迷路のようになっていて、閉じるのが大変難しくなります。

心室中隔欠損の大きなものは、穴を通して左心室から右心室、肺動脈へたくさんの血液が流れ、肺高血圧になります。肺高血圧があると動脈管開存と同じように、赤ちゃんは息が苦しく、ミルクの飲みが悪く、体重が増えません。肺高血圧を2年以上放置すると高い確率で肺動脈硬化症を起こして、欠損孔を閉じても肺の圧力が元に戻らなくなります。早めに欠損を閉鎖する必要があります。

小さい膜様部欠損や筋性部欠損は、自然に穴が閉じることがあります。細菌感染に注意しながら、心音を聞いたり、心エコー検査を繰り返したりして、様子を見ることになります。しかし肺動脈下欠損では小さいからと言って油断はできません。大動脈弁閉鎖不全を合併することがあるからです。このような場合は孔が小さくとも手術で塞いでおく必要があります。手術治療は人工心肺を使って欠損を小さな布を縫い付けて閉じます。

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先天性心臓病 その2

2010年3月15日月曜日

先天性心臓病

先天性心臓病 その2

H君はやや成長の遅い赤ちゃんでしたが、1歳を過ぎたころから次第に元気になり、体格も順調に成長しました。3歳児健診のとき心臓に雑音があるといわれ、近くの心臓専門病院に紹介されました。そこで心電図、胸部レントゲン写真および心エコー検査を行い、直径1センチの心房中隔欠損があるといわれました。今のところ自覚症状がないので、直ぐに手術は必要ないが、小学校に上がる前に手術をした方がよいといわれました。運動は普通にでき、幼稚園にも特に困ることなく通園できました。5歳のとき心臓手術を受け、中隔欠損を閉じました。現在は普通の子供と同じ運動をしていいて、疲れなくなりました。

心房中隔欠損

先天性心臓病の中でもっとも頻度の高い疾患の一つが心房中隔欠損です。心臓には左右の心房の間に中隔といわれる間仕切り壁があって、心房中隔欠損はそこに穴が開いている病気です。穴の位置は中隔中央の凹んだ部分(卵円窩といいます)にあるものが一番多く、他にも心房中隔の一番上、上大静脈が右心房に注ぐところにある欠損や一番下で三尖弁の近くに欠損があるものなどもあります。

心房中隔欠損は自覚、他覚症状があまりないので、聴診だけの健診では見逃されることがあります。そんなわけで今まではよく成人になってから見つかりました。普通心雑音は弱く、心臓病専門医でなければ分からない場合もあります。心電図は特徴的でこれだけで心房中隔欠損を疑うこともあります。心エコーを行えばどの部位のどのくらいの大きさの心房中隔欠損か、治療が必要か否か簡単に診断することができます。肺の高血圧はこの疾患ではまれです。むしろ大人になってから三尖弁の逆流や不整脈などが加わることが多いのです。

治療は、できるだけ小学校に上がる前までに閉じるのがよいといえます。人工心肺を使った手術でも大抵は無輸血で行えますし、比較的小さな傷で手術を行うこともできます。また卵円窩に開いた欠損ならばカテーテル式に塞栓を用いてそれを閉じることもできます。

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先天性心臓病 その1

2010年2月15日月曜日

先天性心臓病

先天性心臓病 その1

Gちゃんは1500gの低体重児です。生れた直後から呼吸が苦しくて、新生児集中治療室の保育器の中で治療を受けています。心エコー検査で動脈管開存と肺高血圧と診断されました。Gちゃんのお母さんは、Gちゃんを妊娠した直後に風疹にかかったことがありました。

主治医の説明では、動脈管は大動脈と肺動脈をつなぐ血管で、お母さんのお腹の中にいる間はなくてはならないものですが、普通、生れて直ぐに閉じるものです。Gちゃんの場合、この動脈管が、たぶんお母さんの風疹の影響と思われますが、大きく開いたままになっていました。そのため大量の血液が動脈管を通って大動脈から肺動脈に流れ、肺動脈が大きく膨れて、気管、気管支を圧迫したため息が苦しくなったのです。

Gちゃんは鼻から胃まで管を入れられ、ミルクを注入されていましたが、呼吸が苦しく、心不全も強いため体重が増えない状態が続いていました。そこで、手術をして動脈管を閉鎖することにしました。

左胸が開かれて大動脈と肺動脈の間にある太い動脈管がクリップで閉じられました。その後Gちゃんは呼吸が楽になり、泣き声も大きくなって、ミルクの量がどんどん増えていきました。二週間後には保育器から出て、お母さんに抱かれて自力でミルクを飲むようになりました。そして1ヶ月後、体重も3000gを超えて、元気に退院しました。

動脈管開存

動脈管は赤ちゃんがまだお母さんのお腹の中にいるときに、大動脈と肺動脈の間を橋渡ししている大事な血管です。胎児は肺が膨らんでいませんから、肺動脈に流れてきた血液が肺に行かずに動脈管を通って大動脈に流れていきます。赤ちゃんは生まれるとすぐに息をします。すると肺が膨らんで、一気に肺に血液が流れるようになります。そして動脈管は役割を終えて自然に閉じます。ところが何かの理由でこの血管が開いたまま残ってしまうことがあり、この状態を動脈管開存と呼んでいます。妊娠初期にお母さんが風疹にかかると赤ちゃんに動脈管開存が生じる可能性が高くなります。

動脈管が開存していると、血液が圧の高い大動脈から圧の低い肺動脈に流れてきます。そのため聴診すると、胸の左上で「ずーん、ずーん」と長く響く音が聞こえます。動脈管が太くてたくさん血液が肺に流れている場合はこうした雑音が聞こえないことがありますが、赤ちゃんは息が苦しくて、息を吸うたびにお乳の下の部分が凹んでしまったり、ミルクが飲めなかったりします。特に低体重で生まれてきたお子さんではこの病気が多く、早めに治療をしなければならないことがあります。

診断は比較的容易で、聴診と胸のレントゲン写真、心エコー検査などで簡単につけられます。治療法はインドメサシンという薬が有効なことがありますが、それが無効の場合は、手術治療ということになります。手術は左の胸を開いて動脈管を金属製のクリップで挟むか、糸でしばるか、あるいは切断して両側を縫ったりします。少し大きな子どもで動脈管が小さめであれば、カテーテル式に血管の内側から栓塞子で閉じることも行われています。

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先天性心臓病

2010年1月18日月曜日

先天性心臓病

先天性心臓病

生まれてくる赤ちゃんの1000人に7人に心臓病があるといわれています。わが国の1年間の出生数が約100万人ですから、毎年7千人の先天性心疾患を持った赤ちゃんが生まれることになります。
先天性の心臓血管異常は数多くありますが、大別すると、静脈血が動脈血に混じって顔色が紫色をしているチアノーゼ心疾患と、静脈血と動脈血が混ざらずピンク色をしている非チアノーゼ性心疾患があります。

非チアノーゼ性心疾患には、次のものがあります。

(1)大動脈や肺動脈、肺静脈などの血管の病気
(2)心房中隔や心室中隔の欠損、心臓内に異常な隔壁ができるもの
(3)弁膜の異常
(4)これらが重なった病気

一方、チアノーゼ性心疾患には次のような種類があります。

(1)ファロー四徴症や完全大血管転位、総肺静脈還流異常など、2つの心臓が比較的良く発達したもの
(2)三尖弁閉鎖や左室低形成症候群、単心室のように一方の心室が小さいか、ほとんど発育していないもの
(3)内臓と心臓の位置が逆につながって、心房、心室、大血管の形や内部の構造が普通と全く異なったかたちのもの(内臓錯位)

次回から非チアノーゼ性心疾患である動脈管開存、心房中隔欠損、心室中隔欠損とチアノーゼ性心疾患であるファロー四徴と三尖弁閉鎖について、5回に分けてお話をいたします。

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不整脈:発作性頻拍症

2009年12月21日月曜日

心臓および血管の病気について(2)

不整脈:発作性頻拍症

Fさんは32歳の男性、報道カメラマンで、事件を追って日本中を駆け回っています。Fさんは高校生のころからごくまれに、心臓が早鐘のように高鳴ることがありました。それは急に体を動かしたときとか、重い荷物を持ち上げたりしたときなどに、発作的に起きましたがすぐにぐっと息をこらえると治りました。

その後10年間くらいは、何度か短い発作がありましたが、自然に治っていました。検診で心電図異常を指摘されていましたが、そのままにしていました。最近、仕事が忙しくなるに従って発作の回数が増えてきました。先日重いカメラをぶら下げて大地震を取材中に、突然発作が起こました。胸が急にどきどきし始め、頭がボーとしてその場に倒れてしまいました。Fさんは救急車で近くの病院に運ばれ、心電図検査で発作性上室性頻拍症といわれました。いろいろな薬を注射されましたが発作は治らず、結局電気ショックを受けもとの脈に戻りました。

Fさんは心臓病専門病院を紹介され入院し、電極カテーテルを使った精密検査を受けた結果、心房と心室を結ぶ電気の通り道が2箇所あることが分かりました。一つの道筋を通して心房から心室に伝わった電子刺激が、もう一つの道筋を通って心室から心房へ電気を伝えてしまうため、電気がぐるぐると回って頻脈発作が起きたということでした。

Fさんは電極カテーテルを使って心房と心室の間の異常な電気伝導の道筋を焼ききる治療を受けました。その後、Fさんは頻脈発作を起こさなくなりました。

頻脈性不整脈

心拍が普通より極めて速くなり、胸が苦しくなるのを頻脈性不整脈といいます。早いリズムが心房から出る場合を上室性頻拍、心室から出る場合を心室性頻拍といいます。

上室性頻拍には洞結節から出るもの、心房壁から出るもの、房室結節から出るもの、異常房室伝導によるもの、それに心房細動・粗動によるものなどがあります。上述のFさんは異常房室伝導による頻脈を起こしたのです。

異常房室伝導とは正常の房室結節からヒス束を通って、左と右の脚への伝導路以外に、右心房あるいは左心房から直接心室に電気が伝わるもう一つの異常な道筋(ケント束といいます)があるものです。正規の伝導路を通った電気がケント束を逆行して心房に伝わると、それがまた正規の伝導路を通って心室に伝わります。こうして心房心室間を電気がぐるぐると回り、心臓が1分間に200回以上収縮してしまう状態が、異常房室伝導による頻拍症です。これはWPW症候群ともいわれています。

診断は普通の心電図でつけられますが、詳しくは心臓カテーテルによる電気生理学的検査によって調べることになります。

上室性頻拍は息こらえや眼球圧迫などで治ることもありますが、多くの場合、頻脈を抑える薬の投与を必要とします。しかしそれで頻拍が治らなければ、電気ショックをかけます。この場合は、左心房に血栓のないことを心エコーで確かめてから、心室収縮時を避けてショックをかけますので、必ず循環器専門医の立会いのもとに行います。

一過性の心房細動・粗動による頻脈では、頻脈の治療と同時に抗血栓療法を行う必要があります。急に心房細動になると、左心房内に血栓ができることがあって、それが血液の流れに乗って脳の血管に詰り、急性の脳梗塞を起こすことがあるからです。

異所性房室伝導や心房細動による頻脈は、カテーテル心内膜心筋焼灼術(アブレーション)により治療することが可能です。

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不整脈:心室細動

2009年11月16日月曜日

心臓および血管の病気について(2)

不整脈:心室細動

Eさんは16歳の女子高校生です。以前からまれに胸がコロンと転ぶような妙な感じがありました。健康診断では医師から心電図上は特に異常ないが、不整脈があるかもしれないといわれていました。学校での運動は普通にやっていて、運動中、胸に違和感を感じたことはありませんでした。

冬の朝、学校のクラブでマラソンをしました。マラソンの途中で多少胸に違和感を感じましたが、何とか完走して学校まで戻ってきました。体育館に入ったところで急に意識が薄れて、崩れるように倒れてしましました。担任の教師が直ちに声をかけ、脈を見て反応がないので、大声で職員室に連絡するよう伝え、心臓マッサージを始めました。同級生に口口で人工呼吸をするように指示しました。この学校には前からAEDが設置されていて、知らせを聞いて養護教員がすぐに運んできました。それをつけると心室細動だったので、電気ショックをかけました。幸いなことに心臓はすぐに拍動がもどり、Eさんは意識を取り戻しました。

職員の連絡で救急車が到着し、Eさんは病院に搬送されました。心電図では初めは不整脈が頻回に出ていましたが、薬を点滴して次第に回数が少なくなりました。詳しい心電図の解析の結果、Eさんの心室性不整脈は心室細動を起こし易い形であることが分かり、近々カテーテル式電気除細動器の植え込みをすることになりました。

心室性期外収縮と心臓収縮停止

心室性期外収縮は心室から異常な電気刺激が出ることです。心筋梗塞や心筋炎、心筋症のような心臓の筋肉に異常があるときに起こることが多いのですが、これらが全くない人にも起こることがあります。単発性の心室性期外収縮が正常心収縮時の心電図のT波から離れたところに生じる場合は、あまり重大な問題は起こしません。しかし心室性期外収縮がT波の下降部分に起こる(R on Tといいます)と、心室頻拍あるいは心室細動(心臓麻痺)になることがあります。心室頻拍とは心室性不整脈がずっと続いて、多くの場合、血圧が低下してしまう状態です。心室細動とは心室が細かに震えたように動くだけで、収縮しない状態をいいます。どちらも命に関る重大な不整脈です。十代の少年に起こる運動時の突然死は、多く場合、この心室性期外収縮による心室細動ではないかと考えられます。

心室性期外収縮や心室頻脈は薬物治療が第一選択です。心筋の興奮性を鎮める薬剤が使われますが、これらが効果なく心室細動になる場合は、電気的徐細動が用いられます。最近では、駅や学校など公共施設にAED(自動電気的徐細動装置)が備えられているので、突然心室頻拍や心室細動になった場合でも、すばやく電気ショックがかけられるようになりました。

心臓の心室にカテーテル電極を入れて、心臓の動きを常にモニターしながら心室細動が起こると直ちにカテーテル電極を通して電気ショックをかける植え込み型徐細動器が開発されています。ペースメーカと同じようなこの徐細動器を用いれば、仮に心室細動が起きても、自動的に徐細動されるので、突然死になる可能性が大幅に軽減されます。

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不整脈:徐脈

2009年10月19日月曜日

心臓および血管の病気について(2)

不整脈:徐脈

Dさんは60歳の男性、商店の経営者。身長160cm、体重75kg、小太りで、近医からは下の血圧が高いと言われていました。あるとき店で、倒れているところを発見されて、救急車で近くの救急病院へ運ばれました。救急車の中で意識は戻りましたが、病院で心筋梗塞と完全房室ブロックと診断され、そのまま心臓カテーテル検査室に運ばれました。静脈から一時的なペースメーカが挿入され、冠動脈造影検査が行われました。結果は冠動脈の先の方が詰っていましたが、梗塞の範囲が小さく、心臓の収縮力は保たれていて、バルーン拡張術などは行いませんでした。しかし一時的ペースメーカをはずすと心拍は1分間に20-30回ぐらいしかありません。医師から心筋梗塞は大丈夫だが、完全房室ブロックのために、ペースメーカを入れる必要があるといわれました。

一週間後Dさんは、再び心臓カテーテル室に運ばれ、ペースメーカを埋め込まれました。静脈から右心房と右心室に電気刺激をする電極カテーテルが挿入され、ペースメーカ本体は左胸を5-6cm切開して筋肉の下に入れられました。

Dさんは心筋梗塞の再発もなく、元通り元気になり仕事に復帰しました。医師からはペースメーカが誤作動することがあるので、強い電磁波の出る家庭電気製品などには近づかないよう注意されました。今は数か月に1回ペースメーカの働き具合や電池の消耗状態をチェックしに行くだけで、6-7年先に電池を交換するまでこのままで行けそうです。

徐脈性不整脈

徐脈性不整脈とは、安静時1分間に50-80回ぐらいある心臓の動きが急に遅くなることです。これには洞性徐脈と洞房ブロック、それに房室ブロックなどがあります。房室ブロックは、心房から心室への電気伝導路(ヒス束、左右の脚)が心筋梗塞などで切れた場合に起こります。ヒス束や左右の脚で電気伝導が完全に止まると、心拍はしばらく出ないため、脳虚血になって意識が消失します。この状態を完全房室ブロックといいます。完全房室ブロックでも心室には自動能がありますから、やがて1分間に20-30回ぐらいの心室収縮が起こります。しかし心臓機能を正常近くまで回復させるためには、体外式ペースメーカで1分間に70前後の電気刺激を与える必要があります。

体外式ペースメーカは静脈を通して右心室まで電極カテーテルを挿入して、体の外から電気刺激を心臓に送る装置です。普通は1分間に70回くらい刺激を送ります。こうして1週間程度様子を見ていても、房室ブロックが治らなければ、埋め込み型ペースメーカを挿入します。

埋め込み型ペースメーカは、心房内に電極を1本、心室に電極を1本入れるDDDと呼ばれるものが一般的に使われています。DDDペースメーカは心房、心室の電気を感知して、心房と心室ともに刺激することができるので、心臓は正常に近い収縮をすることができます。埋め込み型ペースメーカには他に最近、左右の心室を微妙な時間差でそれぞれ刺激する両室ペーシングのできるものがあり、心不全の高度な患者さんに使われてます。さらにペースメーカ機能を有して、心室頻脈や心室細動を自動的に診断して、電気ショックをかけてそれらを治療する植え込み型徐細動器もあり、ペースメーカによる不整脈治療は大変進歩しました。

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心臓弁膜症

2009年8月17日月曜日

心臓および血管の病気について(2)

心臓弁膜症

Bさんは40歳の主婦です。母親から、子供のころに高熱を出してなかなか治らなかったと言われていました。

中学生のとき医者から心臓に雑音が聞こえるといわれ、マラソンなど強い運動は控えるよう指示されました。しかし普段の生活に困ることはなく、24歳で結婚し、26歳で最初の子を出産しました。そのときは特に問題なく出産できました。三年後、2人目の子供を妊娠しました。そのときは産科から心臓弁膜症があるので循環器科を紹介されました。循環器科で慎重に経過観察を受けながら妊娠を継続しました。出産前後は、動悸、息切れがあって、顔や足に軽くむくみが出たりしましたが、何とか無事自然分娩できました。

出産後、循環器科から薬をもらい、飲むようになりました。階段を登ったり、こどもを抱っこしたりすると動悸がでるので、できるだけ乳母車を使い、坂道を避けるようにしていました。その後順調でしたが最近、脈が乱れて動悸が激しくなり、夜間ベッドに仰向けに寝ると息苦しくなり、半分起き上った体位でないと眠れなくなりました。

主治医からは僧帽弁閉鎖不全が進行して心房細動が加わり心不全になったといわれ、心臓専門病院を紹介されました。

専門病院では僧帽弁が硬く、一部が左心房側に膨れていて強い逆流があるので、手術を勧められました。手術は弁膜の一部を切り取って縫い合わせ、僧帽弁の周りにリング状の装具を縫い付けました。心房細動も同時に手術で治しました。僧帽弁の逆流が消えて、心臓のリズムも元に戻り、Bさんは2週間後に無事退院することができました。

心臓弁膜症とは

心臓の中にあって血液の逆流を防止しているのが弁膜です。心臓の弁膜には三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁の4つがありますが、弁膜症になりやすいのは主に僧帽弁と大動脈弁です。弁膜症には狭窄と閉鎖不全、それにその二つが合わさった狭窄・閉鎖不全の状態があります。僧帽弁の疾患ではしばしば心房細動を合併します。

診断は問診、聴診、心電図、胸レントゲン写真、心エコー検査で容易につけられます。治療は強心剤や利尿剤などの薬物療法と手術治療になります。僧帽弁狭窄ではバルーンカテーテルで拡張することも行われています。しかしほかの大部分の疾患では手術治療が行われます。手術は自分の弁をそのまま残す形成術と人工弁で入れ替える置換術の2種類があります。僧帽弁では形成術が主に行われますが、大動脈弁では人工弁置換術になる割合が高いです。

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心筋梗塞

2009年7月20日月曜日

心臓および血管の病気について(2)

心筋梗塞

Aさんは50歳の男性、サラリーマン。身長は168cmですが、体重が75kgで、少し肥り気味。負けず嫌いな性格もあって仕事をバリバリやり、業績はいつも会社でトップクラスです。運動はまれに友達とゴルフをするくらいで、犬の散歩も奥さん任せです。健康を考えてタバコは最近止めましたが、鶏のから揚げやてんぷらが大好物、それらを肴に毎晩ビールを1本以上飲んでいます。会社の検診で血圧の下の値が高いといわれていますが、症状がないのでそのままにしていました。

今朝も郊外の自宅から電車で1時間の会社に出かけました。駅の階段を登っていて、なんとなく胸に違和感を覚えましたが、たいしたことはなかったので、そのまま会社に行きました。顧客と大事な商談中に何度か胸が締め付けられるように感じました。Aさんは大事をとってその日の飲み会をキャンセルして、早めに帰宅しました。

ひと風呂浴びようと湯船に胸まで浸かったところ、息苦しく、早々に出ました。夕飯を食べているときに、一層強い圧迫感が胸の真ん中から左胸にかけて出現し、座っていることができなくなりました。ベッドに横になり奥さんに救急車を呼んでくれるように頼みました。救急車が来るまでの間も胸苦しさは強まるばかりで、不安な気持ちになりました。

間もなくAさんは近くの救急病院に運ばれ、そこで採血と心電図検査を受けました。急性の心筋梗塞と診断され、直ちに、心臓カテーテル検査室に運ばれ冠動脈造影検査を受けました。結果は左冠動脈の前方の真ん中あたりが完全に詰っていました。バルーンカテーテルでその部分を広げ、網状の金属筒(ステント)を入れました。冠動脈は完全に拡大され、Aさんは事なきを得ました。

冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)とは

狭心症や心筋梗塞は、心臓の筋肉に血液を供給している冠動脈の内腔が狭くなったり、完全に詰ったりしたために起こる病気です。冠動脈は年齢とともにコレステロールや石灰が壁内にたまり血管内が狭くなります。内腔が初めの太さの4分の1くらいになると、動作で胸に圧迫感や痛みを覚えるようになります。これを労作性狭心症といいます。血管の内壁が破れてコレステロールが内腔に出て、血栓で完全に詰ると心筋梗塞になります。また血栓ができたり溶けたりして、内腔の閉塞、開通を繰り返す状態を不安定狭心症といいます。

冠動脈疾患を起こす原因はその大部分が脂分やコレステロールの多い食事の摂り過ぎ、運動不足、ストレスなどです。普段から自分の食事に気を配り、よく体を使い、人間関係などをスムーズにしてストレスの少ない環境を作る必要があります。塩分や糖分、アルコールの過剰摂取、喫煙などは冠動脈硬化を助長します。普段から体重や腹囲、血圧に注意し、尿検査、血液検査を定期的に行うことが必要です。診断や治療は全国どこでもほぼ同じレベルで受けることができます。肥満があって、高血圧、動脈硬化、高脂血症、高コレステロール血症や糖尿病などを指摘されたら、定期的に医療機関で診察を受けることをお勧めします。

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弁膜:順方向への血液循環

2009年6月15日月曜日

心臓および血管の病気について(1)

弁膜:順方向への血液循環

心臓には三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁の4つがあります。弁膜の役割はそれぞれの弁の前後で血液が一定方向に行き、逆流しないようにすることです。

三尖弁は右心房から右心室への血液の逆流を防いでいます。この弁は、その名のとおり3つの弁尖からなっていて、薄い扇形の弁が心室の内壁から内腔に向かって伸びています。先端にはパラシュートのような細い紐(腱索といいます)がたくさん着いています。腱索は心室内の小さな筋肉の柱(乳頭筋または肉柱といいます)に付着しています。弁が閉じるとき、乳頭筋が収縮して腱索を引っ張ることで、弁の先端同士が互いに同じ高さで合うように調節し、逆流を防止しています。三尖弁はときに逆流を起こすことがあります。特に細菌が体に入り弁膜についたりすると、炎症が起きて、弁尖が変形して逆流するのです。

僧帽弁は左心房と左心室の間にある弁です。前と後ろの2つの弁尖からなっていますが、構造は三尖弁と同じです。三尖弁と違う点は、弁尖が丈夫にできていて、弁の開き口も三尖弁より少し小さく、楕円形をしているということです。僧帽弁はいろいろなことから逆流や狭窄を起こすことがあります。リウマチ熱や細菌感染(心内膜炎)、心筋梗塞による腱索や乳頭筋の延長や断裂、マルファン症候群、先天性弁膜症、原因不明の弁や腱索の異常などによる、弁の逆流や狭窄が起こります。

肺動脈弁は右心室の出口、肺動脈の入り口のところにある弁膜です。弁尖は3枚小さなチューリップの花びらのような形(半月弁と呼ばれています)をしています。肺動脈弁は4つの弁膜の中でもっとも薄く華奢にできていますが、先天性心疾患を除いてこの弁膜に病気が起こることはまれです。

大動脈弁は肺動脈弁と同じ形ですが、やや厚く、硬くできています。大動脈弁がついている大動脈の根元は玉ねぎ状に膨らんでいます(バルサルバ洞といいます)。その膨らんだ部分の一番下に半月型の弁膜が3つ着いています。大動脈弁の弁尖は西洋の盾のような形をしていて、大動脈と着いていない動く部分(遊離縁といいます)の中央が少し高くなっています。心室が拡張したとき、3つの弁の弁尖中央部が同じ高さでぴったり寄り添って、大動脈からの逆流を防いでいます。大動脈弁は僧帽弁と並んで弁膜症になり易い弁です。リウマチ性や細菌性心内膜炎、マルファン症候群、先天性心疾患、大動脈解離などによって弁に逆流や狭窄が起こります。

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